乳腺のう胞とは?
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乳腺のう胞とは?
のう胞(嚢胞)とは、膵臓や腎臓などの臓器、口腔内など体内の様々な場所に生じる水風船のような水分を溜め込んだ袋状のものです。
乳腺に生じた“のう胞”が“乳腺のう胞”です。通常、乳房内で作られた乳汁などの水分は乳管を通じて乳頭から体の外へと分泌されます。しかし、何らかの原因により、分泌物(水分)が乳管の中に溜まってしまった時に「のう胞」が形成されてしまいます。
35~50歳の女性に多く発症する傾向がありますが、ほぼすべての年齢層の女性の乳房に認められるような、それ程珍しくない病態です。はっきりとした原因は不明ですが、女性ホルモンのバランスが崩れることが影響していると考えられています。
乳腺のう胞では、しこりを感じられることもありますが、自覚症状がなく乳がん検診の際、超音波検査などで偶然発見されることが多いです。発生している場所やサイズによっては、マンモグラフィ検査でも見つかる場合があります。
乳腺のう胞の症状
乳腺のう胞の中身は水分のため、触ってみると比較的やわらかく感じられます。
貯まる分泌物が多くなって、のう胞のサイズが大きくなると乳房の張りや痛みといった症状が現れることもあります。
(主な症状)
・やわらかい“しこり”(腫瘤)
・乳房の張り
乳腺のう胞の治療
乳腺のう胞のほとんどは良性で、治療の対象とはならず経過観察のみで良いものです。
乳腺のう胞内の水分は増減を繰り返し、サイズが小さければ自然消失することもよくあります。また、閉経期を迎えると縮小して、いずれ消失します。
乳房の痛みを感じたり、圧迫感が強かったりする場合には、のう胞内の水分を吸引する処置をおこなうことがあります。
採血で使われるような注射針を乳房に刺し、のう胞の中にたまった水分を吸引します。痛みは個人差もあり、部位によっては痛みが強くなることもありますが、この時の痛みは採血と同じくらいです。
ただし、この処置は、一時的に痛みや圧迫感を緩和するためのものです。のう胞の袋自体を除去するものではないため、分泌物が溜まれば、再びのう胞が生じ、また痛みや圧迫感を感じるようになることもあります。
乳腺のう胞が見つかった場合はどうすればよいの?
繰り返しになりますが乳腺のう胞は良性であり、悪性腫瘍である“がん”とは異なります。
また、乳腺のう胞が乳がんに変化することもありません。
しかし、のう胞の中にがんが隠れていたり、濃縮のう胞は超音波検査では、がんと区別しにくいこともありと、適切な検査や処置が必要です。そのため、検診で乳腺のう胞と指摘されたら、念のため病院で検査を受けてみることをおすすめします。
しこりが伴う場合は、のう胞内がんという悪性腫瘍の可能性もゼロではないため、乳房に針を刺してがん細胞の有無を調べることもできます。医師の指示に従って検査を受けるようにしましょう。
乳腺のう胞に限らずですが、気になる症状がある際や、ご自身の体の状態について疑問・不安があれば放置せずに医師に相談するようにしましょう。
監修:まゆ乳腺クリニック 高木まゆ