乳がんとは?
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乳がんとは?
乳房に発生した腫瘍のことを乳腺腫瘍といい、そのうち悪性の上皮性腫瘍を乳がんと言います。乳がんの多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。男性にも発生することがあります。
乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、脳・骨・肺・肝臓など遠くの臓器にがん細胞が運ばれて遠隔転移することもあります。遠隔転移をしたがんは、乳房以外の臓器に発生していても乳がんの特徴を持ち、その臓器に生じるがんとは性質が異なります。
乳がんは大きく「非浸潤がん」と「浸潤がん」に分けられます。
(1)非浸潤がん
がん細胞が乳管や乳腺小葉だけにとどまっている状態を非浸潤がんと呼びます。
非浸潤がんは、早期の乳がんに分類され、この段階のがんの多くは治ると言われています。
ただし、早期の乳がんは自覚症状があまり感じられません。
(2)浸潤がん
時間の経過とともにがん細胞が増殖し、乳管や乳腺小葉の膜を破って外まで広がった状態の乳がんを浸潤がんと呼びます。浸潤がんの中で最も多いのは浸潤性乳管がんです。
浸潤性乳管がんの他にも、特殊型がんがあります。特殊型は浸潤がんの約10%と報告され
ています。特殊型は更に組織型に応じて、浸潤性小葉がん、管状がん、粘液がん、浸潤性
微小乳頭がん、分泌がんなどに分類されます。
乳がんの症状
早期の段階では自覚症状があまり感じられないとされる乳がんですが、病期の進行とともに症状が現れます。乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。ただし、しこりは乳腺症など、乳がん以外の原因によっても発生することがあります。そのほとんどが良性の腫瘍です。
そのため、しこりを発見した場合でも自己判断せずに、専門医の診断を受け、しこりの原因を断定するべきです。
そのほかの症状には、乳房の痛みや乳頭や乳輪に湿疹やただれが生じたり、左右の乳房の形が非対照になったり、血液が混じったような分泌物が出るなどの症状が見られる時も乳がんが疑われます。また、がんの進行とともに乳房にえくぼのようなへこみを生じることもあります。皮膚の赤みや腫れ、熱っぽさといった症状にも注意しましょう。
乳がんが、わきの下のリンパ節に転移すると、わきの下の腫れやしこり、しこりによる神経の圧迫からくるしびれなどを生じることもあります。
(主な症状)
・乳房や脇の下のしこり
・乳房の痛み
・乳頭や乳輪に湿疹やただれ
・血液が混じったような分泌物 など
上で紹介した症状は、しこり以外も、ほかの病気などでも現れることがありますが、乳がんの早期発見や乳がんとの鑑別するためにも気になる症状がある場合は、専門医の診断を受けることが大切です。
乳がんの検査と治療
乳がんの検査は、問診後に目で見て確認する視診と、触って確認する触診。加えて、超音波(エコー)検査やマンモグラフィ検査をおこないます。また、乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を採取して、顕微鏡で調べる細胞診や組織診によって診断を確定します。
がんの広がり方や転移を調べるためには、CT検査、MRI検査などの画像検査をおこなう場合もあります。
乳がんの治療法には、手術療法(外科治療)、薬物療法、放射線治療があり、それぞれの治療を単独で行う場合や、複数の治療を組み合わせておこなう場合があります。
がんの性質(サブタイプ)や進行度合い(病期:ステージ)、患者さんの身体の状態や年齢、本人の希望なども考慮し、担当医と患者がともに治療法を決めていきます。
【一般的な治療の流れ】
(1)乳がん確定診断
(2)治療計画
(3)術前薬物療法
(4)手術療法
(5)術後治療(放射線治療法・薬物療法)
(6)経過観察
【主な手術】
(1)乳房部分切除術(乳房温存手術)
乳房部分切除術は、乳房の一部を切除する手術方法です。腫瘍から1〜2cm離れたところで切除します。がんを確実に切除し、患者さんが美容的に満足できる乳房を残すことを目的に行います。通常、手術後に放射線照射を行い、残された乳房の中での再発を防ぎます。
乳房部分切除術を受けられる条件については明確なものはなく、がんの大きさや位置、乳房の大きさ、本人の希望などにもよるので、手術を担当する医師とよく相談することが重要です。
しこりが大きい場合は、術前薬物療法によって腫瘍を縮小させてから手術を行うことがあります。
手術中には、切除した組織の断端(切り口)のがん細胞の有無を顕微鏡で調べて、確実にがんが切除できていることを確認します。がんが手術前の予想よりもはるかに広がっている場合は、手術中に乳房をすべて切除する乳房全切除術に変更するか、もしくは、再手術で乳房全切除術を行うこともあります。
切除した組織の断端を顕微鏡で調べて、確実にがんが切除できていることを確認し、術後に放射線治療を行うことで残された乳房内の再発等の局所再発の可能性は少なくなります 。また、がんをしっかりと切除していれば、乳房全切除術を行った場合と予後に差はありません。
(2)乳房全切除術
乳房全切除術は、乳房をすべて切除する手術方法です。乳がんが広範囲に広がっている場合や、多発性(複数のしこりが離れた場所に存在する)の場合に行います。
(3)腋窩リンパ節郭清
手術前の触診や画像診断、手術中のセンチネルリンパ節生検などで腋窩(わきの下)リンパ節にがんが転移していると診断された場合は、腋窩リンパ節郭清(リンパ節を切除する手術)を行います。切除する範囲やリンパ節の数は、転移の範囲によって決まります。
【放射線治療、薬物療法の紹介】
(1)放射線治療
手術後の再発を防ぐために行います。部分切除後の残存乳房や乳房周囲のリンパ節に照射します。また、骨や脳に転移した場合にも症状の緩和のために照射します。
なお、再発には「局所再発(乳房周囲の再発)」と「遠隔再発(他の臓器:肺、肝臓、骨などへの転移)」があります。放射線照射が防ぐことができるのは局所再発です。
(2)ホルモン療法
ホルモン受容体陽性乳がん(ルミナルタイプ)は、女性ホルモンの影響を受けて細胞が増殖するが知られています。そのため、再発の予防や病気の進行を抑えるために、女性ホルモンの刺激を抑えるホルモン療法が推奨されています。
(3)化学療法
化学療法は乳がんのタイプによって効果に違いがあり、ホルモン受容体のない乳がん(HER2型、トリプルネガティブ)やホルモン受容体の少ない乳がん(ルミナルBタイプ)にはより効果的であることがわかっています。ホルモン受容体陽性の乳がん(ルミナルAタイプ)でも病気の拡がりや、リンパ節転移の状況によっては化学療法をおこなうことがあります。再発の予防や病気の進行を抑えるために行われますが、脱毛や倦怠感、神経障害などの副作用があります。
腫瘍を小さくしたり化学療法の効果を判定したりするために、手術前に行うこともあります(術前化学療法)。
乳がん発生のリスクを高める要因
乳がんは、『女性ホルモン(特にエストロゲン)による影響』『生活習慣の要因』『遺伝的要因』が要因と言われています。
(1)女性ホルモンによる影響
女性ホルモン「エストロゲン」の分泌期間が長くなることによって、乳がんの発生リスクが高まると言われています。「初潮を迎える年齢が低い」「閉経が起こる年齢が遅くなる」「出産や授乳の経験がない」場合、乳がんにかかるリスクが高いと考えられています。
(2)生活習慣の要因
喫煙習慣や運動不足、閉経後の体重増加など、身近な日常生活の状態が乳がん発生リスクに関係することがあります。
栄養バランスがととのった食生活を整え、乳がん発生リスクを高めないように気をつけることが大事です。
また、運動不足や体重増加も乳がんの発生リスクを左右する可能性が高いため、日ごろから適度な運動の習慣を持つことも大事なポイントです。
(3)遺伝的要因
細胞を修復する役割を持つ遺伝子が変異することによって、血縁関係を持つ家系内で乳がんなどの発生リスクが高まることもわかっています。
一般的に乳がんは40代以降で発生するケースが多いですが、遺伝的要因がある場合には比較的若い年齢でも発症します。
乳がんは早期に発見すれば怖くない
乳がんの予防法はありませんが、早期発見であれば、90%以上の人が治癒します。既に乳がんは怖い病気ではありません。
初期症状がわかりにくく、痛みを起こすことが少ない乳がんを早期発見するためには、定期的な乳がん検診を受ける必要があります。乳がんは40代以降から発症するケースが多いため、最低限40代にさしかかったら検診を受け始めるようにしましょう。
家族に若い年代で乳がんにかかっている方がいらっしゃる場合は、年齢が若くても検診を受けることをおすすめします。
(セルフチェック方法)
乳がんは自分で見つけることもできます。日頃から入浴や着替えのときなどに、自分の乳房を見たり触ったりして、セルフチェックを心がけましょう。
しこりの有無を確かめるためには、手のひらを使って乳房を全体的に触っていきましょう。
特に乳頭裏のしこりは見つかりにくいため、奥まで触ってチェックしてみましょう。
良性のしこりと悪性のしこりを判別するには、しこりの動きに注目します。
一般的に良性のしこりはよく動くものや弾性があって境界がはっきりしないことが多く、乳がんのしこりは硬くて動きにくく、境界がはっきりとしているという特徴があります。
生理前は乳房が張りやすくセルフチェックが難しい時期になるため、生理前の自己触診は避けましょう。生理後から数日後の乳房の張りが少ない時期に、「皮膚がひきつっていないか」「乳頭にくぼみがないか」に加え、乳房内にしこりがないかを探していきましょう。
ただし、セルフチェックでは見つけられないこともあります。また、実際には、良性と乳がんを判断することは非常に困難ですので、定期的に乳がん検診を受けることと、何会場を見つけたら早期に医療機関を受診してきちんと診断してもらうことが大切です。
監修:まゆ乳腺クリニック 高木まゆ